2012.01.10
石巻北部バイパス仮設住宅(稲井地区)にて、中継装置設置実験を行なっています。
おながわさいがいエフエムの放送する女川町は
起伏の激しい地形であることに加え、津波により市街地の大半が浸水してしまったため、
仮設住宅もそれらの地域を避けて建設されており、町中心部からかなり距離の離れた場所や
山を越えていかねばならない場所などがあります。
中には土地が足りないため、やむなく隣接する石巻市内に建てられた仮設住宅もあります。
さいがいエフエムの電波は、町中心部から距離があったり山を越えていく場所の仮設住宅では
受信しにくいか、またはほとんど受信不可能なのが現状で、
「避難所時代はラジオを聴けていたのに、仮設に入ってからはラジオが聞こえなくなった」
という苦情もたくさんいただいています。
特に石巻市内にある石巻北部バイパス(稲井地区)仮設住宅については、
女川方向に向けた全てを山に囲まれていることから
地上デジタル放送のテレビも受信できない状況(BSのみ)で、
女川さいがいエフエムはおろか、宮城県域のローカル放送もほとんど受信できない状況です。
私たち、さいがいエフエムとしてもこの状況をなんとかしたいと、現在送信所の移設や
中継局の設置などの対策を考えていますが、移設・中継局設置ともに多額なコストが
かかること、また女川町の放送局である「おながわさいがいエフエム」が市境を超えて
石巻市内に中継局を作るということに対する法律上の問題があり、
その費用調達や時期を含めて、検討を続けておりました。
そんな状況の中、独立行政法人 情報通信研究機構(以下、NICT)様よりお申し出をいただき、
NICTが開発した音声アシストシステムを用いた簡易的な中継局を
同仮設住宅内東集会所に実験的に設置することになりました。
音声アシストシステムとは、視覚障害者の方などが利用することを想定して
美術館・博物館などの公共施設で音声によるガイドなどを無線で行うために
開発された技術で、特定小電力無線という免許のいらない低出力の電波を利用しています。
http://www.ee.kagu.tus.ac.jp/lab/mrgl/pdf/b_05_178.pdf
この周波数はFM放送バンドに近い75.8MHzが割り当てられてており、
デジタルチューナー式でないアナログ式のFMラジオなどであれば
ギリギリ受信することができる周波数です。
NICTではこのシステムを被災地などの臨時放送局用に転用することを提唱しており、
今回、おながわさいがいエフエムが技術協力・機材提供を受けて
実験的に中継局を設置することにしたものです。
中継局は2012年1月よりすでに稼働しており、
仮設住宅内東集会所に設置した受信設備により、女川町から受信した放送電波を
この音声アシストシステムを利用して、75.8MHzで再送信しています。
(ただしシステムの都合で数十秒ごとに一回無音となります。)
石巻北部バイパス仮設住宅(稲井地区)中継局
送信周波数 | 75.8MHz |
---|---|
受信可能エリア | 石巻北部バイパスの11~20号棟付近 |
仮設住宅の集会所でも、おちゃっこ(お茶)しながらラジオが聴けるようになりました。
NICT様のご協力に感謝申し上げますとともに、
この実験結果をもとに今後、その他の仮設住宅などでの受信状況改善にも
繋げていきたいと考えております。